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初級編|第3回 CFの見方
初級編 · 第3回

CFの見方

利益と現金の違いを理解し、営業・投資・財務の一覧から現金残高まで読む。

この回のゴール
CF計算書を上から最後まで追い、現金が増減した場所を説明できる。

企業実例:三井不動産/練習問題3問/更新日:2026年9月13日

1. CFは「期間中の現金の動き」

CF(Cash Flow/キャッシュ・フロー)は、一定期間に現金がどこから入り、どこへ出ていったかを示します。PLの利益が黒字でも、売上の入金が遅かったり、在庫の仕入れが先に必要だったりすると現金は減ります。

CF計算書では「現金及び現金同等物」を使います。現金同等物は、容易に換金でき、価値変動リスクが僅少な短期の投資など。BSの「現金及び預金」と範囲が必ず同じとは限りません。

営業CFは事業、投資CFは将来の投資、財務CFは調達と返還。3つのCFとその他調整で期首の現金から期末の現金につながる。
3種類のCFと現金残高の関係。実際の表では換算差額・連結範囲の変更なども確認します。

2. 営業・投資・財務を分ける

3種類のCFの役割
分類主な入出金読み方
営業CF商品代金の入金、仕入・人件費・税などの支払事業から現金を回収できたか
投資CF設備取得、設備売却、有価証券取得・売却など何に投資し、何を手放したか
財務CF借入・社債、返済、配当、自社株買いなどどう調達し、誰に返したか

プラスは現金流入、マイナスは流出。ただし、プラスだから良い、マイナスだから悪いとは決まりません。設備投資は将来の稼ぎのために現金を使うので、投資CFはマイナスになることがあります。

財務CFのプラスは借入増加など、マイナスは返済や株主還元などかもしれません。符号だけでなく、内訳を読みます。利息・配当などの分類は会計基準・表示方法によって異なるため、実際の会社のCF計算書を確認しましょう。

3. 利益と営業CFが違う理由

掛売り:売上は立つが、まだ入金されない

架空の商店が商品を100万円で掛売りし、原価60万円を現金で支払ったとします。利益は40万円でも、代金が未回収なら現金は60万円減ります。利益と現金のタイミングが違うためです。

減価償却:今期の費用と今期の支払は違う

機械の購入代金は購入時に支払いますが、PLでは使用期間に費用を配分します。間接法の営業CFでは、利益に含まれた減価償却費を足し戻します。ただし「減価償却が現金を生む」わけではありません。

運転資金:売掛金・在庫・買掛金を見る

売掛金が増えると未回収が増え、在庫が増えると販売前の商品にお金が留まります。一般に営業CFを押し下げます。買掛金が増えると支払が後になり、一般に営業CFを押し上げます。現金以外の変動や連結範囲の変更があるため、BSの差額とCFの調整行が常に一致するとは限りません。

図解|利益100から営業CF90へ(架空例・万円)
税引前利益100
+ 減価償却費20120
− 売掛金の増加3090
− 在庫の増加1080
+ 買掛金の増加1595
− 税金の支払590

その他の損益・調整はない単純化した例。一般的な間接法の仕組みを示しています。

4. 企業実例を全体で読む

三井不動産/連結・日本基準。2026年3月期(2025年4月1日〜2026年3月31日)と前期を比較。公表2026年5月13日、確認2026年9月13日。

最新四半期の短信ではCF計算書が作成されていないため、CF計算書全体が確認できる最新通期を使います。前回BSの2026年6月末と、今回CFの2026年3月末は別の時点です。

CF計算書の全体一覧(百万円)
項目2025年3月期2026年3月期
営業活動
税金等調整前当期純利益363,060397,014
減価償却費140,516150,976
減損損失10,89419,757
受取利息及び受取配当金△11,770△10,754
支払利息82,34976,999
持分法による投資損益(△は益)2,4724,352
投資有価証券売却損益(△は益)△54,505△51,676
固定資産売却益△29,186△51,776
売上債権及び契約資産の増減額(△は増加)1,072△6,627
仕入債務の増減額(△は減少)9,410△3,492
販売用不動産の増減額(△は増加)40,302△151,032
その他(営業)204,094△42,955
小計758,708330,785
利息及び配当金の受取額19,62516,608
利息の支払額△78,873△75,410
法人税等の支払額又は還付額(△は支払)△100,208△126,712
営業活動によるCF599,252145,270
投資活動
有形及び無形固定資産の取得による支出△271,480△236,411
有形及び無形固定資産の売却による収入43,965135,389
投資有価証券の取得による支出△137,092△127,743
投資有価証券の売却による収入103,57473,042
敷金及び保証金の差入による支出△11,269△9,894
敷金及び保証金の回収による収入8,6787,109
預り敷金保証金の返還による支出△24,836△38,129
預り敷金保証金の受入による収入49,37759,490
貸付けによる支出△72,641△34,606
貸付金の回収による収入42,60921,609
定期預金の預入による支出△1,729△3,415
定期預金の払戻による収入5,9673,415
連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出△8,082△777
同・取得による収入41
同・売却による収入180
その他(投資)△49,232△28,091
投資活動によるCF△321,970△179,014
財務活動
短期借入れによる収入4,396,3856,189,920
短期借入金の返済による支出△4,364,429△6,137,216
長期借入れによる収入427,268487,500
長期借入金の返済による支出△545,025△485,103
社債の発行による収入45,060203,680
社債の償還による支出△80,602△104,800
配当金の支払額△87,534△91,467
非支配株主からの払込みによる収入3,7802,976
非支配株主への配当金の支払額△8,447△7,471
非支配株主への払戻による支出△1,865△1,952
ファイナンス・リース債務の返済による支出△11,862△13,731
自己株式の増減額(△は増加)△42,093△99,913
連結範囲の変更を伴わない子会社株式取得による支出△4,294
同・売却による収入2,755
財務活動によるCF△269,367△59,118
現金残高へのつながり
現金及び現金同等物に係る換算差額△24,31211,906
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)△16,397△80,955
現金及び現金同等物の期首残高179,249163,272
新規連結に伴う現金及び現金同等物の増加額421
現金及び現金同等物の期末残高163,27282,317

出典:三井不動産 2026年3月期決算短信、添付資料21〜22ページ(PDF23〜24ページ目)。表示単位は百万円、百万円未満切捨て。△は負の値、「—」は原資料の表記です。

5. 内訳から現金減少を説明する

図解|期首から期末の現金へ(百万円)
期首残高163,272
+ 営業CF145,270
+ 投資CF△179,014
+ 財務CF△59,118
+ 換算差額11,906
期末残高(公表)82,317

公表CFの合計から計算した期末は82,316、公表期末は82,317。百万円未満切捨てによる1百万円の表示差があります。各行は公表値です。

現金は減ったが、営業CFはプラス

営業CFは145,270百万円(1,452.70億円)の流入。投資CFは179,014百万円、財務CFは59,118百万円の流出でした。換算差額のプラス11,906百万円も反映した現金の増減公表値は△80,955百万円です。

利益だけでは現金を説明できない

同じ通期の税引前利益は397,014百万円。営業CFは145,270百万円で、表示値の差は251,744百万円です。減価償却費150,976百万円を足し戻す一方、販売用不動産の増減による調整は△151,032百万円、税金の支払は△126,712百万円など、複数の項目が現金を押し下げています。

「差額は全部在庫」「利益が現金化されていないので不正」とは言えません。間接法の調整を最初から最後まで追います。投資有価証券や固定資産の売却益を営業CFで引くのは、売却代金を投資CFなどで扱うための調整です。

投資CFは、設備購入額そのものではない

固定資産取得の支出△236,411百万円に対し、固定資産売却の収入135,389百万円があります。そのほか有価証券・貸付なども含まれるので、投資CF△179,014百万円と設備購入額を混同しないようにします。

財務CFは大きな入出金の差額

短期借入収入6,189,920百万円と返済支出△6,137,216百万円が両方あります。調達収入だけを見て、全額が借金の純増と考えてはいけません。配当△91,467百万円、自社株に関する流出△99,913百万円なども含めて判断します。

図解|調達の「総額」と「純額」を区別する(百万円)
短期借入の入出金

収入 +6,189,920

返済 △6,137,216

差し引きの収支

+52,704

収入−返済で計算

2026年3月期の公式CFから作図。この純収支は短期借入の2行だけの計算で、財務CF全体やBSの借入残高の変化と同じではありません。

簡便な「営業CF+投資CF」は145,270−179,014=△33,744百万円。ただし投資CFには設備以外の取引が含まれ、評価モデルで使うFCFFと同じ定義とは限りません。FCFの作り方は第19回で扱います。

出典:三井不動産 2026年3月期決算短信、添付資料21〜22ページ(PDF23〜24ページ目)。表示単位は百万円、百万円未満切捨て。△は負の値、「—」は原資料の表記です。

6. 練習問題:表だけで計算する

問題1|現金残高をつなぐ
架空会社のCF(万円)
項目金額
期首現金50
営業CF30
投資CF△40
財務CF20
その他調整0

① 期末現金は?
② 営業CF+投資CFは?
③ 現金が増えたことだけで、本業の現金収支が改善したと言えますか?

問題1の解答・途中計算

① 50+30−40+20=60万円

② 30−40=△10万円

③ 言えません。営業CFはプラスですが、投資も含めると10万円不足し、財務CF20万円の流入が現金増加を支えています。本業の「改善」は前年営業CFがないため判断できません。

問題2|間接法の調整
架空会社の資料(万円)
項目金額
税引前利益100
減価償却費20
売掛金の増加30
在庫の増加10
買掛金の増加15
税金の現金支払5

その他の調整はありません。① 営業CFは?
② 減価償却費を足す理由は?
売掛金・在庫の増加は減算、買掛金の増加は加算します。

問題2の解答・途中計算

① 100+20−30−10+15−5=90万円

② 利益計算で差し引かれた減価償却費は、当期の現金支出を伴わないため足し戻します。機械購入代金の支払がなかったという意味ではありません。

問題3|実例の投資と現金
三井不動産・2026年3月期(百万円)
項目公表値
営業CF145,270
投資CF△179,014
財務CF△59,118
換算差額11,906
期首現金及び現金同等物163,272
期末現金及び現金同等物(公表)82,317
固定資産取得による支出△236,411
固定資産売却による収入135,389

① 営業CF+投資CFは?
② 固定資産の取得・売却だけの純収支は? これを投資CF全体と同じとみなせますか?
③ CFと換算差額から期末現金を計算してください。百万円未満切捨てで公表値との表示差があります。

問題3の解答・途中計算

① 145,270−179,014=△33,744百万円

② −236,411+135,389=△101,022百万円。投資CF△179,014とは違います。投資CFには固定資産以外の入出金も含まれます。

③ 163,272+145,270−179,014−59,118+11,906=82,316百万円。公表期末82,317との差は1百万円で、切捨てによる表示差です。

出典:上記公式通期決算短信、添付資料21〜22ページ。

7. まとめ

次回は「PL・BS・CFのつながり」。3つの表を同じ会社で合わせて読みます。

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学習用記事です。特定銘柄の売買を推奨しません。資料確認日:2026年9月13日。以後の決算は自動反映されません。