PL・BS・CFのつながり
利益・会社の状態・現金の動き。3つの財務諸表を、ひとつにつなげて理解する。
3表の役割とつながり、利益と現金の違いを説明できる。
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1. 3表の全体像
会社の数字を見る基本は、PL・BS・CFという3つの財務諸表です。同じ会社の活動を、利益、財産と調達源、現金の動きという違う角度から見ます。最初は細かい科目よりも、何を測る表かを押さえましょう。


ここで使う小さな会社の数字は学習用の架空例です。企業実例は第8節で分けて扱います。
2. PL・BS・CFの違い

| PL:損益計算書 | 一定期間の売上・費用・利益 |
|---|---|
| BS:貸借対照表 | ある時点の資産・負債・純資産 |
| CF:キャッシュ・フロー計算書 | 一定期間の現金及び現金同等物の増減 |
例えば、PLとCFは「4月1日から翌年3月31日まで」、BSは「3月31日現在」を見ます。期間の成果と、その結果残った状態を区別するのが出発点です。
3. PL:利益が生まれる過程
PLは売上から費用を引き、利益がどこで生まれ、どこで減ったかを追う表です。最終利益だけでなく、途中の利益も確認します。

| 売上高 | 100,000 |
|---|---|
| 売上原価 | △60,000 |
| 売上総利益 | 40,000 |
| 販売費及び一般管理費 | △25,000 |
| 営業利益 | 15,000 |
| その他損益・税金(差引) | △3,000 |
| 当期純利益 | 12,000 |
売上総利益は100,000−60,000=40,000円。本業の営業利益は40,000−25,000=15,000円です。図の100・85・15は同じ関係を簡略化した数字です。営業利益と当期純利益を同じ「利益」として扱わないようにします。
「その他損益・税金」は入門用にまとめた項目です。実際のPLでは会計基準に応じて営業外損益、特別損益、税金などを分けて読みます。
4. BS:会社の状態
BSは、会社が何を持ち、それをどう調達したかを示します。左側が資産、右側が負債と純資産。必ず「資産=負債+純資産」が成り立ちます。

| 流動資産 | 60,000 |
|---|---|
| 固定資産 | 90,000 |
| 資産合計 | 150,000 |
| 流動負債 | 40,000 |
| 固定負債 | 30,000 |
| 負債合計 | 70,000 |
| 純資産 | 80,000 |
| 負債・純資産合計 | 150,000 |
資産には現金だけでなく、売掛金、在庫、設備などが含まれます。負債には借入金だけでなく買掛金もあります。純資産には出資や蓄積した利益が含まれますが、同額の現金を持っているという意味ではありません。
5. CF:現金の流れ
CFは現金の動きを営業・投資・財務に分けます。営業CFは事業に関する入出金、投資CFは設備や投資資産の取得・売却、財務CFは借入・返済・増資・配当などです。

| 期首現金 | 25,000 |
|---|---|
| 営業CF | +20,000 |
| 投資CF | △15,000 |
| 財務CF | △5,000 |
| 為替などのその他調整 | 0 |
| 現金増減 | 0 |
| 期末現金 | 25,000 |
20,000−15,000−5,000=0円なので、期首と期末の現金は同じです。しかし「何も活動しなかった」のではありません。本業で得た現金を投資や返済・還元に使った可能性があります。投資CFのマイナスも、それだけで悪いとは言えません。
実際のCFは現金及び現金同等物を対象とし、為替などの調整も確認します。利息・配当の分類や対象範囲は会計基準と会社の注記に従います。
6. 3表のつながり
同じ会社の、同じ1年間を3つの表で見てみましょう。ここだけの架空例を使います。単位は万円です。
年初は現金20万円、利益剰余金50万円。1年間にサービスを12万円分提供し、5万円は現金で受け取り、残り7万円は翌年に受け取る約束です。費用・税金・配当・借入・設備購入など、ほかの取引はないものとします。
PL:今年の利益
サービスの売上 12
費用 0
利益 12万円
まだ入金されていない7万円も、提供済みサービスの売上に含めます。
CF:今年の入出金
現金で受け取った 5
支払った 0
現金の増加 5万円
翌年に受け取る7万円は、今年の入金には入りません。
↓ 1年後のBSに、両方の結果が残る
現金:20 → 25万円 今年の入金5万円が増えた
売掛金:0 → 7万円 まだ受け取っていない代金
利益剰余金:50 → 62万円 今年の利益12万円が積み上がった
「利益」と「入金」を別々に追う
PLの利益12万円 → BSの利益剰余金が12万円増える。利益剰余金は、過去から積み上がった利益の記録です。現金をその金額だけ貯めている、という意味ではありません。
CFの現金増加5万円 → BSの現金が20万円から25万円になる。CFが示すのは今年の増減、BSが示すのは年末に残った金額です。増加額5万円と年末残高25万円を混同しないようにします。
今回は差の7万円がBSの売掛金に残ります。だから、利益が12万円あっても、現金は5万円しか増えていません。
BSの左右も確かめる
年初に現金20万円と設備30万円、負債0、資本金0、利益剰余金50万円を持つ会社とします。設備は減価償却しない土地などと考え、この例では価値が変わりません。
年末の資産は現金25+売掛金7+設備30=62万円。負債0+純資産62万円と一致します。資産の増加12万円の中身は、現金5万円と売掛金7万円です。
実際の企業では費用・税金・配当なども反映します。現金の範囲も注記で確認しますが、まずはこの一例で「利益の蓄積」と「現金の増減」を分けて覚えましょう。
7. 利益と現金が違う理由

売掛金:売れても、まだ入金されない
商品を10万円で掛け売りすると、売上の計上と代金の入金は別の時期になることがあります。未回収の代金はBSの売掛金に残ります。売上額がそのまま利益額になるわけではなく、原価なども差し引きます。
在庫:先に払っても、費用は後になる
現金で仕入れた商品が未販売なら、原則としてBSの棚卸資産に残ります。支払った時点で全額がPLの売上原価になるわけではありません。
減価償却:購入時の支払と毎年の費用は別
設備を現金で買うと、購入時に投資CFとしてお金が出ます。費用は使用期間に配分されます。減価償却費を営業CFの計算で足し戻すのは、その期の現金支出を伴わない費用を調整するため。現金が新しく生まれるわけではありません。
図の減価償却「現金:当年0」は、当年の減価償却計上そのものに現金支出がないという意味です。設備を購入した年の支払が0という意味ではありません。
8. 企業実例:メルカリ
メルカリの決算でも、「もうかった金額」と「入ってきた現金」は違います。まずはPL・BS・CFを一つずつ読み、最後につなげます。
撮影資料と同じ2026年6月期第3四半期の例です。PLとCFは2025年7月〜2026年3月の9か月間、BSは2026年3月31日の残高。グループ全体の決算(連結・IFRS)です。最新通期ではありません。以下は億円に換算し、小数第1位に丸めています。
① PL:9か月で、いくらもうかった?
| 項目 | どういう意味? | 金額(億円) |
|---|---|---|
| 売上収益 | サービスなどで得た売上 | 1,672.9 |
| 売上総利益 | 売上から原価を引いた利益 | 1,234.5 |
| 営業利益 | 運営費なども引いた事業の利益 | 345.2 |
| 当期利益 | 税金なども反映した最終的な利益 | 194.0 |
読み取り:最終的に194.0億円の黒字。ただし、これだけでは現金がいくら増えたかは分かりません。
② BS:3月末に、何が残っていた?
| 項目 | どういう意味? | 金額(億円) |
|---|---|---|
| 現金及び現金同等物 | 手元の現金と、すぐ現金に換えられる資金 | 1,552.3 |
| 営業債権及びその他の債権 | 顧客などから今後受け取るお金 | 3,377.7 |
| 資産合計 | 現金・債権・設備など、持っている資産全体 | 6,737.6 |
| 負債合計 | 借入や預り金など、支払・返済等の義務 | 5,532.7 |
| 資本合計(純資産) | 資産から負債を引いた残り | 1,204.9 |
読み取り:現金のほかに、まだ受け取る予定のお金も大きい。資産6,737.6億円を、すべて現金だと考えてはいけません。
③ CF:9か月で、現金はどう動いた?
| 項目 | どういう意味? | 金額(億円) |
|---|---|---|
| 期首の現金 | 9か月間が始まる前の残高 | 1,470.3 |
| 営業CF | 事業に関する現金の出入りの差引 | −192.6 |
| 投資CF | 設備・投資資産・定期預金などの出入り | −281.6 |
| 財務CF | 借入・返済など、資金調達の出入り | +536.4 |
| 為替の影響 | 外貨を円換算する際の変動 | +19.8 |
| 現金の増加額 | この9か月間で増えた現金 | +82.0 |
| 期末の現金 | 3月末に残った現金。BSの現金と同じ | 1,552.3 |
PLでは194.0億円の黒字。でも営業CFでは192.6億円の現金流出。借入などの財務CFが536.4億円プラスだったため、ほかの動きも合わせた現金は82.0億円増えました。
なぜ、黒字でも営業CFはマイナス?
利益がすべてすぐ入金されるとは限らず、利益に直接表れない資金の移動もあるからです。主な項目を、現金を使う側と入る側に分けて見ます。
| 項目 | どういう意味? | 金額(億円) |
|---|---|---|
| 営業債権等の増加に伴う調整 | 未回収の代金などが増え、資金を使う側 | −823.3 |
| 信託保有金の純増加 | 信託に置く資金が増え、手元資金を使う側 | −535.0 |
| 預り金の増加 | 利用者等から預かった資金が増える側 | +380.9 |
| 保証金の減少 | 預けていた保証金の回収など、資金が戻る側 | +455.0 |
例えば、今後受け取る債権が増えても、それは今ある現金ではありません。ただし営業CFのマイナスを、すべて未入金の売上だけで説明することもできません。上の表は抜粋で、税金などほかの項目もあります。
正式な数値・会計上の補足
| PL:売上収益 | 167,291 |
|---|---|
| PL:売上総利益 | 123,454 |
| PL:営業利益 | 34,518 |
| PL:当期利益(全体) | 19,400 |
| PL:親会社所有者帰属利益 | 19,431 |
| BS:現金及び現金同等物 | 155,229 |
| BS:営業債権及びその他の債権 | 337,771 |
| BS:資産合計 | 673,763 |
| BS:負債合計 | 553,272 |
| BS:資本合計 | 120,491 |
| CF:営業活動 | △19,259 |
| CF:投資活動 | △28,161 |
| CF:財務活動 | +53,638 |
| CF:為替変動の影響 | +1,983 |
| CF:現金増加額(公表値) | +8,200 |
| CF:期首残高 | 147,028 |
| CF:期末残高 | 155,229 |
単位は百万円。1億円=100百万円です。「当期利益(全体)」19,400と「親会社所有者帰属利益」19,431は、利益をどの株主に帰属させるかが違う数字です。ここではまずグループ全体の利益を使います。
百万円未満切捨てにより、3区分と為替の合計8,201と公表増加額8,200には1百万円の表示差があります。期首147,028+増加額8,200も、期末155,229とは1百万円の表示差があります。本文の億円表示はさらに丸めています。
出典:メルカリ決算短信・英訳(2026年5月11日、SGX掲載)。PL:添付7頁、BS:添付5〜6頁、CF:添付11〜12頁。2026年9月13日確認。
9. 練習問題とまとめ
問題1
次の架空会社のPLから、①売上総利益、②営業利益を計算してください。
| 売上高 | 100,000 |
|---|---|
| 売上原価 | 60,000 |
| 販管費 | 25,000 |
解答と解説
①100,000−60,000=40,000円。②40,000−25,000=15,000円。原価と販管費は、どちらも費用として差し引きます。
問題2
次のBSから、①純資産はいくらか、②資産合計をすべて現金とみなせるか答えてください。
| 現金 | 25,000 |
|---|---|
| 売掛金・在庫・設備等 | 125,000 |
| 資産合計 | 150,000 |
| 負債合計 | 70,000 |
解答と解説
①150,000−70,000=80,000円。②みなせません。現金は25,000円で、残り125,000円は別の資産です。
問題3
その他調整は0とします。①期末現金はいくらか、②当期利益と現金増加額は一致するか答えてください。
| 当期利益 | 12,000 |
|---|---|
| 期首現金 | 25,000 |
| 営業CF | +20,000 |
| 投資CF | △15,000 |
| 財務CF | △5,000 |
| その他調整 | 0 |
解答と解説
①25,000+20,000−15,000−5,000=25,000円。②一致しません。現金増加額は0円で、当期利益は12,000円です。この表だけでは、差の原因の内訳までは特定できません。

PLは期間の利益、BSは時点の残高、CFは期間の現金の動き。利益と現金は別なので、3つをつなげて読みます。
