おとなのファイナンス
ファイナンス基礎編|第0回
FINANCE BASICS 0 / 10

会社・株式・資本市場とは何か

PLやPERを学ぶ前に、そもそも「会社はなぜ存在し、誰のお金で動き、その価値はどう決まるのか」を大きな地図としてつかみます。

この回のゴール
会社 → 資本市場 → 企業価値という流れを理解し、この後のPL・BS・CF、資本コスト、バリュエーションを「別々の用語」ではなく、つながった仕組みとして見られるようになる。
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CHAPTER 01

会社とは

会社は、人・お金・設備・情報などの資源を集め、商品やサービスを社会に提供するための仕組みです。個人では難しい大きな仕事を、組織として継続的に行うために存在します。

会社は単なる「建物」や「社長の持ち物」ではありません。法人として契約の主体になり、顧客、従業員、取引先、銀行、株主など多くの関係者とつながりながら価値を生み出します。

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そもそも会社とは何か

なぜ株式会社が必要なのか

大きな事業には大きなお金が必要で、同時に失敗するリスクもあります。そこで、出資を「株式」という小さな単位に分け、多くの人から資金を集め、リスクを分散できるようにしたのが株式会社です。

多くの投資家から資金を集める
一人では負担できない大規模な事業が可能になる。
有限責任
株主は原則として出資額の範囲でリスクを負う。
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なぜ株式会社が必要なのか

株式会社の歴史

株式会社の原型を理解するには、大航海時代がわかりやすい例です。遠洋交易は成功すれば大きな利益が期待できる一方、沈没、海賊、商売の失敗など巨大なリスクがありました。そこで複数の投資家が資金とリスクを分け合う仕組みが発達しました。

ポイント:株式会社は「大きな挑戦に必要な資金」と「失敗したときのリスク」を社会で分担するための発明と考えると本質が見えます。
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株式会社の歴史

会社にお金が入るまで

会社が事業を行うためのお金は、大きく3つに整理できます。株主から出資してもらうお金、銀行や社債投資家から借りるお金、そして事業活動から自分で稼ぐお金です。

株主・債権者
会社
設備・人材・研究開発

ファイナンスは、この「お金をどう集め、何に使い、どれだけ価値を生み出すか」を考える学問でもあります。

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会社にお金が入るまで
CHAPTER 02

資本市場

資本市場は、お金を必要とする企業と、お金を運用したい投資家を結びつける仕組みです。単に「株を売買する場所」ではなく、社会にある資金をどの企業・事業へ配分するかを決める装置でもあります。

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資本市場とは何か

発行市場と流通市場

発行市場(Primary)
企業が新しく株式や社債を発行し、投資家から資金を集める。企業にお金が入る。
流通市場(Secondary)
すでに発行された株式などを株式保有者同士が売買する。通常、その売買代金は企業には直接入らない。

ただし、流通市場で形成される株価は、将来の増資やM&A、経営判断などに影響します。だから企業に直接お金が入らなくても、セカンダリ市場は企業経営と無関係ではありません。

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発行市場と流通市場

資本市場のプレイヤー

中心には会社があり、その周囲に顧客・取引先・従業員などがいます。さらに外側には株主、銀行、社債投資家、証券会社、運用会社など資金提供・仲介のプレイヤーが存在し、それを証券取引所、規制当局、監査法人などが支えます。

図解を見る|資本市場のプレイヤー
資本市場のプレイヤー

お金の出し手によって権利が違う

資金提供者主なリターン元本返済立場
銀行利息必要債権者
社債投資家利息必要債権者
株主配当・値上がり益原則不要残余請求権者
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お金の出し手によって権利が違う

返済順位とリスク・リターン

会社が苦しくなったとき、一般には借入や社債などの負債が株主より先に返済されます。株主は最後に残った価値を受け取る立場なので、最も下振れリスクが大きい。その分、企業が大きく成長したときには大きなリターンも期待します。

重要:返済順位が低いほどリスクは高く、要求されるリターンも高くなる。この考え方が、後の「資本コスト」につながります。
図解を見る|返済順位とリスク・リターン
返済順位とリスク・リターン
CHAPTER 03

企業価値

株価とは何か

株価は1株あたりの市場価格です。ただし、現在の利益だけで決まるわけではありません。将来の成長期待、金利、リスク、需給、投資家心理などが織り込まれます。つまり株価は「今の会社」よりも「将来どうなると思われているか」を強く反映します。

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株価とは何か

時価総額とは何か

時価総額 = 株価 × 発行済株式数

時価総額は、株式市場がその会社の「株主価値」をいくらと見ているかを表す数字です。株価だけを見て「高い・安い」と判断できないのは、発行済株式数が会社ごとに違うからです。

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時価総額とは何か

なぜバリュエーションが必要なのか

良い会社と、良い投資先は同じではありません。どれだけ素晴らしい会社でも価格が高すぎれば投資妙味は小さいかもしれない。一方、地味な会社でも価格が十分に安ければ魅力的かもしれません。

そこで、企業の実力と市場価格を比較するために、PER、PBR、EV/EBITDA、DCFなどのバリュエーション手法を使います。

図解を見る|バリュエーションはなぜ必要?
バリュエーションはなぜ必要?

資本コストとは何か

会社にとって「返済不要の株主資本」も無料ではありません。株主はリスクを取っているので、そのリスクに見合うリターンを求めます。銀行や社債投資家も同様です。

資本コスト:お金の出し手が企業に求める最低限のリターン。

企業が資本コストを上回る収益率で投資できれば価値を生み、下回る投資を続ければ価値を壊す。この考え方がROIC、WACC、DCFの土台です。

図解を見る|資本コストとは何か
資本コストとは何か

企業価値をどう考えるか

企業価値を考えるときに重要なのは、将来どれだけ稼げるか、どれだけ成長できるか、そしてその将来がどれだけ不確実かです。

利益・キャッシュフロー
稼ぐ力が大きいほど価値は高くなりやすい。
成長
将来の利益やキャッシュフローが伸びるほど価値は高くなりやすい。
資本コスト
リスクが高く要求リターンが高いほど現在価値は小さくなる。
市場価格との比較
価値と価格の差を見るのが投資判断。
図解を見る|夢のある企業の価値をどう考える?
夢のある企業の価値をどう考える?
図解を見る|企業価値を動かす3要素
企業価値を動かす3要素

株主価値とEV

株式市場で見る時価総額は株主に帰属する価値です。一方、M&Aや事業比較では、債権者も含めた「事業全体の価値」を見るためEV(Enterprise Value)を使います。

EV ≒ 時価総額 + 有利子負債 − 現預金

厳密な計算ではリース負債、非支配持分、非事業資産などを調整する場合があります。ここでは全体像をつかむための簡略式です。

CHAPTER 04

今後の学習

ここまでの内容は、それぞれ単独の用語ではありません。会社が資本市場から資金を集め、その資金を事業へ投じ、利益やキャッシュフローを生み、その結果が企業価値や株価に反映される、という一本の流れです。

1
会計基礎
PL・BS・CFを読み、会社が何を持ち、どう稼ぎ、キャッシュをどう生むかを見る。
2
財務分析
ROE・ROA・ROICなどで収益性や資本効率を見る。
3
企業価値評価
PER・PBR・EV/EBITDA・DCFで価格と価値を比べる。
4
投資判断・企業分析
開示資料・業界構造・成長性・リスクまで統合して判断する。
図解を見る|ファイナンスを学ぶ全体地図
ファイナンスを学ぶ全体地図
図解を見る|今後発信していくこと
今後発信していくこと
EXERCISE

練習問題

問題1
企業が新株を発行し、投資家から100億円を調達しました。これは発行市場と流通市場のどちらでしょうか。

問題2
創業者が自分の保有株を別の投資家に50億円で売却しました。その50億円は会社に入るでしょうか。

問題3
同じ100億円の利益を出す2社でも、企業価値が異なるのはなぜでしょうか。
解答を見る
1:発行市場。新しく発行された株式の対価として企業に資金が入るため。

2:原則として会社には入らない。既存株主から別の株式保有者へ株式が移る流通市場の取引だから。

3:将来の成長率やキャッシュフロー、リスク、資本コストなどが違うため。同じ現在利益でも将来価値は同じとは限らない。
第0回まとめ
株式会社は、大きな事業に必要な資金とリスクを多くの人で分担する仕組み。資本市場は企業と投資家をつなぎ、資金を社会の中で配分する。企業価値は、稼ぐ力・成長・リスク(資本コスト)の組み合わせで考える。ここからPL・BS・CF、ROIC、WACC、PER、DCFへ進んでいきます。
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まとめ